ルーテル教会は世界最大のプロテスタント教会であり、伝統的なキリスト教会です。式文(リタジー)を用いて礼拝を行います。

バイブルエッセイ

神さまの個展会場。注目の作品は......

あなたの天を、あなたの指の業を/わたしは仰ぎます。
月も、星も、あなたが配置なさったもの。
そのあなたが御心に留めてくださるとは
人間は何ものなのでしょう。
詩編 8編4節(日本聖書協会『聖書 新共同訳』)

 大学で物理学を勉強していた方と出会いました。小学生のころから理科が苦手で、私にとっては何も興味を持てなかった分野でした。何が面白いのかと思って尋ねてみたら、「世の中にあるどんな事柄も数式で表わすことができるところに惹かれた」と言われました。これは私にはとてもわかりやすい答えでした。理科の面白さはそういうところにあるのだろうな、とほんのちょっぴり分かった気がしました。
 そして、考えてみると、ほかのいろいろな分野も似たようなことが言えると思います。
 たとえば、彫刻や絵画を作りだす芸術家。言葉にはならないような気持ちを作品にあらわしていらっしゃるのでしょう。だから見る者も、専門家でない限りは、その作品をどう言い表していいのか分かりません。気持ちで感じるだけです。
 作曲家もそうでしょう。自分の気持ちをひとつの曲に表わしていらっしゃると思います。聴く人も、作曲者の気持ちに共感できた時、その曲のすばらしさを味わいます。
 日本人でもおそらくほとんどの人がどこかで聞いたことのある讃美歌。「いつくしみ深き友なるイエスは、罪とがうれいを取り去りたもう。心のなげきをつつまず述べて、などかはおろさぬ負える重荷を。いつくしみ深き友なるイエスは、われらの弱きを知りて憐れむ。悩み悲しみに沈めるときも、祈りにこたえて慰めたまわん」

 どんな時に聴いても、うたっても、心を安らかにさせてくれる讃美歌です。でも、この歌の背景を知らされたとき、なおこの歌に込められた思いを共感することができます。作詞者のスクリーブン氏は、ご自身の婚約者が急死し、それを悲しむお母さんを慰めるためにこの詩を作ったと言われます。
 わたしたちはみな、悲しみを背負って生きていますから、スクリーブン氏がこの詩を作ったときの気持ち、また、悲しむ人の心を少しでもやわらげようとして作った歌だと知ったとき、そこに込められた思いをなお強く感じることになります。
 聖書にもあふれる思いがこめられた言葉がたくさんあります。「あなたの天を、あなたの指の業を/わたしは仰ぎます。/月も、星も、あなたが配置なさったもの。/そのあなたが御心に留めてくださるとは/人間は何ものなのでしょう」(詩編8編4節)
 この詩人は、天も、地も、この世にあるものすべてが神さまの作品であることを思い、この詩を残しました。作者である神さまをたたえています。この世界は、作者である神さまの言葉には言い表せないおこころがあふれている。しかも、その中の最高傑作品は人間。
 時に悲しみ、時に憂い、時に探し、時に喜び、時に愛し、時に愛され、時につまずき、時に立ち上がる。そんな優れた作品のひとつが、この私......。
 そのことに気づいた時、飲み込まれそうな大空を見上げながら、その大空をもその≪指の業≫で造られたお方をたたえつつ、詩人は、この詩を残しました。


 そう、あなたも神さまによって造られた最高傑作。この世界のすべてをお造りになった神さまが、もう言葉では言い表せないとおっしゃりながら、そのお気持ちを形に表されたのがあなたです。
 この作者は、同じ作品を二つとお造りにはならない方です。だから、この作者は、あなたがあなたらしく悩み、あなたがあなたらしく喜び、あなたがあなたらしく今日を生きることをお喜びになるようです。
 鏡を見たとき、思い出してください。「わたしは神さまの作品。世に二つとない最高傑作なのだ」と。ほかの誰もがそれを忘れていても、作者は知っています。
パパレンジャー

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