ルーテル教会は世界最大のプロテスタント教会であり、伝統的なキリスト教会です。式文(リタジー)を用いて礼拝を行います。

バイブルエッセイ

希望の確率

なすべきことはただ一つ、後ろのものを忘れ、前のものに全身を向けつつ、神がキリスト・イエスによって上へ召して、お与えになる賞を得るために、目標を目指してひたすら走ることです。...(中略)...しかし、あなたがたに何か別の考えがあるなら、神はそのことをも明らかにしてくださいます。いずれにせよ、わたしたちは到達したところに基づいて進むべきです。
(フィリピの信徒への手紙3章13b〜16節)

 幼い頃の夢が実現する確率というのは、3%らしい。ふと、そのようなことを小耳にはさみました。3%、100人に3人。30人程度のクラスメイトがいたとして、1人いるかいないか、というところでしょうか。
 もちろん、成長していくにつれてまた別の夢が生まれてきて......ということもありますから、一概にはどうとも言えません。しかしそれでも、おそらく90%以上の人は、幼いころ夢に描いていた自分とはちがう人生を送っている計算になります。
 幼いころの夢を持ちつづけて実現させるという、その意志の力は本当に貴いものだと思います。しかしわたしたちが人生を歩む中で、何かをあきらめなければならないことが決して少なくないのもまた、事実です。

 ある目標に向かって進んでいたはずが、気がつくと思っても見なかった場所にいることがあります。夢を追い続けることを状況が許さないことがあり、また、努力したのだけれども、どうしても届かないことがある。人生思うようにはいかないというのは充分わかっているつもりなのだけれども、理想と現実の差に苦しみ、立ち止まってしまう。大なり小なり、そのような経験は誰にでもあるのではないかと思うのです。
 しかし、泣く泣く夢をあきらめて別の道に進んだ、けれどもその道こそ自分の天職だった、ということだってあります。華やかなプロスポーツ選手になりたかった、けれども実際についたのは希望とは違う、目立たない裏方の仕事だった。けれども裏方がいなければ、試合は成り立たないのです。人生思うとおりにいかないことがある、いやむしろ、思うとおりにならないことの方が多いかもしれません。しかしそこで、ただむやみに理想ばかりを見るのではなく、立ちどまってもう一度、今いる場所を見直してみる。するとそこで新しく、見えてくるものがあるかもしれません。そこで生きがいを見出し、そこにとどまるという道もあり、もちろんそこから一発逆転を目指して夢を追い求める道もある。選択肢はいくつもあります。しかしどの道を選ぶにせよ、まず立ちどまって、深呼吸。そこから見えてくるものが、きっとあるはずです。
 新しい季節が始まります。これからもまた、理想と現実の差に悩むことはあるのでしょう。思いがけないできごとに、まったく違う方向へと背中を押されて戸惑うこともあるのでしょう。しかしそこで「世の中、思い通りにならない」と嘆くより、今いるところでいったん立ちどまり、いま何ができるか、自分はどうしたいのか、今の自分の役割は何か、と「到達したところに基づいて」考え、問いかけながら歩んでいく。そのような歩みもまた、楽しいものとなるかもしれません。祈っています。どうぞ、良い人生の旅を!
Aki

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